最終更新日:2025年5月17日
はじめに
三浦半島で釣れるヒラスズキは、マルスズキ(シーバス)と比べて臭みが少なく、上品な白身の味わいで人気の高級魚である。しかし、「ヒラスズキにはクドアという寄生虫がいるから食べられないのか?」「三浦のヒラは安全なのか?」といった疑問や不安の声をよく耳にする。
クドア症は食後数時間以内に一過性の嘔吐や下痢などの症状を引き起こす食中毒である。2010年代に入り、ヒラメなどの魚に寄生する粘液胞子虫「クドア・セプテンプンクタータ(Kudoa septempunctata)」による食中毒が報告されるようになった。
この記事では、三浦半島で釣れるヒラスズキのクドア症について正確な知識を提供し、安全に美味しくヒラスズキを楽しむための具体的な方法を紹介する。
この記事を読むことで分かること:
- ヒラスズキのクドア症とは何か
- クドアの見分け方(詳細な写真解説付き)
- 安全な調理法と対処方法
1. ヒラスズキのクドア症とは?
クドア・セプテンプンクタータとは
クドア・セプテンプンクタータ(Kudoa septempunctata)は粘液胞子虫の一種で、主に海水魚の筋肉組織内に胞子のう(シスト)を形成する。このシストの中には多数の胞子が存在し、これを生のまま摂取することで食中毒症状を引き起こす可能性がある。
クドアは当初ヒラメで問題となったが、その後の調査でスズキ類を含む様々な魚種にも存在することが明らかになっている。特に三浦半島周辺で釣れるヒラスズキには、高い確率でクドアが寄生していることが、私の経験上3匹に1匹は付いている。ちなみに50cm以下のほうがついてない確率が高い。
生活環と感染経路
クドアの完全な生活環はまだ解明されていないが、魚の筋肉内で胞子を形成し、その魚が他の生物に食べられることで拡散すると考えられている。ヒラスズキの場合、餌となる小魚や甲殻類からクドアに感染する可能性あり。また、海水中に放出された胞子が直接魚に取り込まれる経路も推測されている。
重要ポイント: クドアは人間の体内では増殖しない。症状は胞子が放出する毒素によるもので、寄生や感染症ではない。
2. クドア症の危険性と症状
主な症状
クドア症の主な症状は以下の通り:
- 嘔吐(食後1〜6時間程度で発症)
- 下痢
- 腹痛
- 吐き気
幸いなことに、症状は一般的に軽度で、多くの場合24時間以内に回復。後遺症が残ることはほとんどないとされている。
私の周りの症状を見ると、下痢/嘔吐が嵐のようにやってきて去っていく感じ
厚生労働省の見解
厚生労働省の食中毒ファクトシートによると、クドア症は「一過性の食中毒」に分類されており、クドア・セプテンプンクタータの胞子を含む魚を生食した場合に発症する可能性があるとしている。症状の重篤度は比較的低いものの、特に高齢者や免疫力の低下した方は注意が必要。
3. 【重要】クドア症の見分け方
肉眼での確認方法
ヒラスズキを捌く際、以下のポイントで白色のシスト(袋状の構造)がないか確認すべし:
- 皮を剥いだ直後の表面チェック
- 筋肉表面に白い斑点状または米粒状の物体がないか確認
- ドアのシストvs正常な組織の見分け方
- クドアのシストの特徴:
- 大きさ:0.5〜2mm程度の白い点や斑点
- 形状:円形または楕円形
- 色:周囲の筋肉より白い
- 分布:不規則に点在していることが多い

白い数ミリ単位の丸い玉がいる。目視可能
取り除いたのが以下、半径1mm-3mmくらい小さいのは目視できてないと思われる。

4. 安全な食べ方と対処法
基本原則:生食はリスクあり
三浦半島のヒラスズキは、クドアの寄生率が30%以上(2025年現在)と高いため、刺身などの生食はリスクが高い。安全性を考慮すると、加熱調理を推奨。
加熱処理によるクドアの失活化
クドアは熱に弱く、適切な加熱処理によって失活する。厚生労働省の指針によると、魚の中心温度を75℃で5分以上加熱することでクドアの病原性を失わせることが可能。
おすすめの調理法:
- フライ・ムニエル(カリッと焼き上げると外はカリカリ、中はふかふかに)
- 塩焼き
- 煮付け
- 天ぷら
- 鍋物
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冷凍処理によるクドアの失活化
クドアは低温にも弱く、-20℃で4時間以上の冷凍処理によって失活することが確認されている。家庭用冷凍庫の場合、設定温度が-18℃程度のことが多いため、より長い時間(24時間以上)の冷凍を推奨。
冷凍後の調理のポイント:
- 自然解凍よりも冷蔵庫内での緩やかな解凍が適している
- 解凍後は速やかに調理
- 冷凍・解凍による品質低下を考慮し、煮付けなどの調理法が適している
注意: 家庭用冷凍庫の性能は様々なため、完全な失活を保証するものではない。加熱調理との併用がより安全。
5. まとめ:三浦半島のヒラスズキを安全に楽しむために
三浦半島のヒラスズキは、クドアの寄生率が高いため、生食よりも加熱調理を推奨。適切に加熱すれば、クドアのリスクを回避しつつ、ヒラスズキの美味しさを十分に楽しむことが可能。
安全に楽しむためのポイント
- 捌く際は丁寧に確認:白いシストがないかチェック
- 加熱調理を基本:中心温度75℃で5分以上
- 冷凍処理も有効:-20℃で4時間以上(家庭用冷凍庫なら24時間以上)
- シストを発見したら:その部分を取り除き、残りは必ず加熱
ヒラスズキはフライやムニエルにすると、ふっくらした食感と上品な味わいが楽しめる高級白身魚。適切な知識と調理法で、三浦半島の恵みを安全に味わおう。

